第5章　自然法爾・全託・無為
　　　　　　　　　　　　　　　　―すべてを神に委ねます―

６　一向専心　南無阿弥陀仏

生きている念仏

五井先生のご著書「生きている念仏」の中から「善人誇り」について前項で紹介しましたが、その中で五井先生が言わんとされていることは、ひたすら「南無阿弥陀仏」を唱え仏に帰依する浄土門の教えと、五井先生の教えは、まったく同じ救いの原理であるということです。

　「人間は皆罪悪深重の凡夫であり、地球上でどんなに偉いと言われても、大悪人と呼ばれる人もたいして大差はありません。エバっている人はバカ！」とは、五井先生が常々おっしゃっていたことです。

その凡夫が、どんなに一生懸命、精進・努力して仏になろうとしても、不安や迷い、争いの心など煩悩は消えることはありません。凡夫が仏になるのではなく、凡夫なる自分を捨て切った時、自ずと仏性は現れるのです。その方法が「南無阿弥陀仏」の六文字を唱える念仏行であるわけです。

　法然も、親鸞も、あらゆる経文を読み碩学を極めた人ですが、その学問や自らの地位もすべて投げ捨てて、「ただ南無阿弥陀仏と申して疑いなく往生するぞと思いとりて申して申すに他には別の仔細候わず」と、阿弥陀仏に任せ切る念仏行に入った、と五井先生はおっしゃっています。

一向専心　南無阿弥陀仏

　「一向専心　南無阿弥陀仏」

現代においても、念仏の真意を理解し唱えれば念仏は生きています。繰り返し言いますが、人間は罪深いことにおいては五十歩百歩であり、どんなに努力しても凡夫は凡夫のままだということです。その凡夫を捨て切ること、それが「念仏」であり、五井先生の教えでは「祈り」です。

人間は肉体の力の無力さを覚り、努力することの限界を見切り、とことん絶望を味わった時、真に神の光明が差し込むのだと感じます。

「仏様！助けてください！私の力ではどうすることもできません！南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏・・・・・」と、ひたすら念仏するその姿は、阿弥陀仏と一つになり光の玉となり得るのでしょう。これこそが、五井先生の教えの原点です。

「神様！助けてください！肉体人間の力ではもはや地球をどうすることもできません！世界を平和にしてください！世界人類が平和でありますように・世界人類が平和でありますように・世界人類が平和でありますように・・・・・」と、神に祈るその姿こそ、神と一つになり世界に光を放っているに間違いありません。

無為への道

神への「祈り」は「想念停止」と同義であり、それは「空」です。想いを空っぽにすることは神への「全託」であり、それは「神我一体」の姿です。想いがあるから苦しいのであり、何も想わないでいられれば苦悩は生じることはなく安心そのものです。しかし、想いをなくせと言われても普通にはできるものではありません。それに替わる方法が「祈り」です。想いは出てもいいから迷ってもいいから、その想いを祈りに替え積極的に神に想いを向けるのです。

五井先生は「神様ありがとうございます」だけで悟ったとおっしゃっていました。肉体にまつわるとらわれを放ち安心立命するには「祈り」しかありません。ひたすら神を呼ぶことです。

「神様、神様、神様・・・・！」

「神様ありがとうございます・神様ありがとうございます・神様ありがとうございます・・・」

「世界人類が平和でありますように・・・・・」

その祈りは、カルマを超え神と一体となった姿であり、それこそが「無為への道」です。

　世界人類が平和でありますように